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精神科・心療内科の薬と飲み合わせに注意が必要な薬②
プレガバリン(リリカ)について

公開日 2025.1.6

はじめに

精神科・心療内科から処方される薬と内科や整形外科などの他の科から処方される薬には、作用が似ていることで、効果が想定以上に強まることがあります。

また、薬剤の相互作用で逆に効果が弱まってしまうこともあります。

特に注意を要するのは相互作用で効果が想定以上に強まる場合で、副作用、有害事象が生じることです。

鎮痛薬プレガバリン(リリカ)について

プレガバリン(リリカ)は、神経の痛みを抑える治療薬として開発され、米国では2004年に、日本では2010年承認されました。

抗てんかん作用、抗不安作用も有していることから、米国、欧州ではてんかんにも保険承認を得ています。

また欧州では、全般不安症(全般性不安障害)に保険承認を得ています(図1)。

図1 プレガバリン(リリカ)の各国の保険承認

プレガバリン(リリカ)の各国の保険承認

この意味では、プレガバリン(リリカ)自体が精神科・心療内科の治療薬であるとも言えます。

神経障害性疼痛の有効性と受容性の比較の解析では、有効性は他剤より低かったものの、受容性は優れている結果でした1)、(図2)。

図2 神経障害性疼痛に対する治療薬の有効性と受容性の比較

神経障害性疼痛に対する治療薬の有効性と受容性の比較

線維筋痛症に対する治療薬の有効性に忍容性比較の解析では、有効性に優れている結果でした2)、(図3)。

図3 線維筋痛症に対する治療薬の有効性と忍容性の比較

線維筋痛症に対する治療薬の有効性と忍容性の比較

てんかん部分発作に対する抗てんかん薬の有効性と安全性の比較の解析では、有効性と安全性に優れている結果でした3)、(図4)。

図4 てんかん部分発作に対する抗てんかん薬の有効性と安全性の比較

てんかん部分発作に対する抗てんかん薬の有効性と安全性の比較

全般不安症(全般性不安障害)に対する抗不安効果はSNRIデュロキセチンベンラファキシンと並ぶほど効果が高いことが報告されています4)、(図5)。

図5 プレガバリン(リリカ)と抗うつ薬の不安(全般不安症)に対する効果

プレガバリン(リリカ)と抗うつ薬の不安(全般不安症)に対する効果

上記の日本、米国、英国での保険承認での作用以外にレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)への効果が報告されています。

レストレスレッグス症候群に対する治療薬の効果の比較では、比較的高い有効性が認められています5)、(図6)。

図6 レストレスレッグス症候群に対する治療薬の有効性の比較

レストレスレッグス症候群に対する治療薬の有効性の比較

また、近年、そう痒(痒み)への有効性が報告されています。

種々の原因によるそう痒を対象に、各薬剤とプレガバリンとガバペンチンの効果を比較した解析では、プレガバリンとガバペンチンで高い有効性が示されたことが報告されています6)、(図7)。

図7 痒みに対する薬剤の効果の比較

痒みに対する薬剤の効果の比較

従来、尿毒症性そう痒への効果が報告されており、尿毒症性そう痒患者に抗ヒスタミン薬として使用されている三環系抗うつ薬のドキセピン(日本未承認)とプレガバリン(リリカ)の2群にわけて投与し、効果を比較した研究では、プレガバリン(リリカ)が有意に痒みを緩和する結果でした7)、(図8)。

図8 尿毒症性そう痒に対する抗ヒスタミン作用薬とプレガバリン(リリカ)の効果の比較

尿毒症性そう痒に対する抗ヒスタミン作用薬とプレガバリン(リリカ)の効果の比較

プレガバリン(リリカ)は、ガバペンチン(ガバペン)と同様に、γ-アミノ酪酸(GABA)の誘導体で、神経に結合し、興奮性の神経伝達物質の放出を抑制することで、神経の興奮を抑え、痛みを抑制するとされています8)。

GABA、ガバペンチン(ガバペン)、プレガバリン(リリカ)の化学構造式は以下となっています(図9)。

図9 GABA・ガバペンチン(ガバペン)・プレガバリン(リリカ)の化学構造式

GABA・ガバペンチン(ガバペン)・プレガバリン(リリカ)の化学構造式

より正確には、電位依存性カルシウムチャネルの補助サブユニットであるα2δ蛋白と高い親和性で結合し、神経前シナプスにおけるカルシウムの流入を低下させ、各種興奮性神経伝達物質の放出を抑制することにより鎮痛作用を発揮すると考えられています8)、(図10)。

図10 プレガバリン(リリカ)の作用機序

プレガバリン(リリカ)の作用機序

これらの作用から、ガバペンチンに近い作用からガバペンチンとプレガバリン(リリカ)はガバペンチノイドと呼称されています。

また、薬理学的で神経のα2δ蛋白に結合し作用することから。ガバペンチン(ガバペン)、プレガバリン(リリカ)はα2δリガンド(アルファツーデルタリガンド)とも呼ばれています。

プレガバリン(リリカ)の剤型はカプセル状と口腔内崩壊錠(OD錠)があり、用量の規格は25mg、75mg、150mgがあります(図11)。

図11 プレガバリン(リリカ)の剤型

プレガバリン(リリカ)の剤型

併用による有害事象①転倒、骨折

プレガバリン(リリカ)は眠気、めまい、ふらつき(協調運動障害)が生じやすいことがわかっています9)。

眠気、めまい、ふらつきの結果、転倒、骨折につながりやすいことが報告がされています10)、11)。

向精神薬も転倒のリスクがあり12)、特に処方の多いSSRIとの併用にはより注意を要します。

プレガバリン(リリカ)とSSRIは同程度に転倒にリスクがあることが報告されています10)、12)、(図12)。

図12 向精神薬とプレガバリンの転倒リスクの比較

向精神薬とプレガバリンの転倒リスクの比較

同じく、プレガバリン(リリカ)と抗うつ薬の使用は、いずれも股関節骨折のリスクの上昇と関連することが報告されています10)、11)、(図13)。

図13 プレガバリン(リリカ)とSSRIの股関節骨折のリスク

プレガバリン(リリカ)とSSRIの股関節骨折のリスク

骨折リスクに関連する薬の同時投与・追加投与では、股関節骨折のリスクが増加することが調査で報告されています13)。

同報告では回避可能なペアがあったことも報告されており、可能な限り、効能・効果が重なる場合、減薬等の検討を要することが提言されています。

併用による有害事象②抗てんかん薬の多剤化

てんかんの治療では、単剤でのコントロールが推奨されています。

てんかん患者さんで抗てんかん薬を内服している際に、目的が鎮痛のためでも、プレガバリン(リリカ)の処方を受けると、2剤目の抗てんかん薬の追加処方となることに注意が必要です。

てんかん患者さんでは、抗てんかん薬が多剤になると、副作用発現が生じやすくなることや、認知機能に影響が生じることがあり、それらの点にも配慮が必要です14)、15)。

おわりに

不安障害の患者さんが、整形外科からプレガバリンが処方され徐々に不安が軽減していき、最高用量の処方になった時には、すっかり不安が消退し、明るく元気になられた事例を経験したことがあります。

日本では疼痛治療薬として承認されているため、痛みの治療薬としての印象が強いですが、海外では抗てんかん薬、抗不安薬としても知られています。

薬の作用のメカニズムからも、抗てんかん薬で痛みにも不安にも効くと理解した方がスムーズかもしれません。

また、近年、痛みと痒みの経路に重なっているところが多いこともわかってきており、「うつ・不安と痛み」の相互関係に加え、「痛みと痒み」の相互関係も注目されています。

このような状況において、プレガバリン(リリカ)の重要性は、引き続き高まることが期待されます。

参考

  • 1) Finnerup NB, et al.: Pharmacotherapy for neuropathic pain in adults: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol, 14: 162-73, 2015.
  • 2) Farag HM, et al.: Comparison of Amitriptyline and US Food and Drug Administration-Approved Treatments for Fibromyalgia: A Systematic Review and Network Meta-analysis. JAMA Netw Open, 5: e2212939, 2022.
  • 3) Zhao T, et al.: Evaluate the Efficacy and Safety of Anti-Epileptic Medications for Partial Seizures of Epilepsy: A Network Meta-Analysis. J Cell Biochem, 118: 2850-2864, 2017.
  • 4) Slee A, et al.: Pharmacological treatments for generalised anxiety disorder: a systematic review and network meta-analysis. Lancet, 393: 768-777, 2019.
  • 5) Zhou X, et al.: The Efficacy and Safety of Pharmacological Treatments for Restless Legs Syndrome: Systemic Review and Network Meta-Analysis. Front Neurosci, 15: 751643, 2021.
  • 6) Xu W, et al.: Efficacy and Safety of Pregabalin and Gabapentin for Pruritus: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Pain Symptom Manage, 69: 65-81, 2025.
  • 7) Foroutan N, et al.: Comparison of pregabalin with doxepin in the management of uremic pruritus: a randomized single blind clinical trial. Hemodial Int, 21: 63-71, 2017.
  • 8) Taylor CP, et al.: Pharmacology and mechanism of action of pregabalin: the calcium channel alpha2-delta (alpha2-delta) subunit as a target for antiepileptic drug discovery. Epilepsy Res, 73: 137-50, 2007.
  • 9) Zaccara G, et al.: The adverse event profile of pregabalin: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Epilepsia, 52: 826-36, 2011.
  • 10) Mukai R, et al.: Evaluation of pregabalin-induced adverse events related to falls using the FDA adverse event reporting system and Japanese Adverse Drug Event Report databases. J Clin Pharm Ther, 44: 285-291, 2019.
  • 11) Leung MTY, et al.: Gabapentinoids and Risk of Hip Fracture. JAMA Netw Open, 7: e2444488, 2024.
  • 12) Seppala LJ, et al.: Fall-Risk-Increasing Drugs: A Systematic Review and Meta-Analysis: II. Psychotropics. J Am Med Dir Assoc, 19: 371, 2018.
  • 13) Emeny RT, et al.: Association of Receiving Multiple, Concurrent Fracture-Associated Drugs With Hip Fracture Risk. JAMA Netw Open, 2: e1915348, 2019.
  • 14) Kopciuch D, et al.: Pharmacovigilance in Pediatric Patients with Epilepsy Using Antiepileptic Drugs. Int J Environ Res Public Health, 19: 4509, 2022.
  • 15) Mermi Dibek D, et al.: Investigation of the Effect of Antiseizure Medications on Cognition in Patients With Epilepsy. Clin EEG Neurosci, 55: 643-650, 2024.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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