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ニトラゼパム(ベンザリン・ネルボン)の
特徴・作用・副作用

公開日 2023.8.7

作用・特徴

ニトラゼパムは日本で初めて導入されたベンゾジアゼピン系睡眠剤で、抗不安作用、抗けいれん作用も併せ持つ、中間型ベンゾジアゼピン睡眠剤です。

入眠困難、中途覚醒に効果があります。

抗けいれん作用が比較的強く、てんかんに対する保険承認も得ています。

先発医薬品のベンザリンが、1967年から塩野義製薬から、同じく先発医薬品のネルボンが第一三共株式会社から販売されました。

現在はベンザリンは共和薬品、ネルボンはアルフレッサファーマ社に販売が移行しています。

ニトラゼパムは、ベンゾジアゼピン環の側鎖第7位がニトロ基(-NO2)に置換され、抗けいれん作用が強化されています1)。

その後に同じロシュ社で開発されたクロナゼパム(先発医薬品:ランドセン・リボトリール)と化学構造式が近いことがわかっており、薬理プロファイルも近いものを有しています(図1)。

図1 ニトラゼパムとクロナゼパムの化学構造式

ニトラゼパムとクロナゼパムの化学構造式

側鎖第7位にニトロ基を有するベンゾジアゼピンはニトロベンゾジアゼピンと呼ばれ、いずれも催眠作用と抗けいれん作用が強い特徴があります。

現在までに以下の4剤が開発され発売されました(図2)。

  • ニトラゼパム(先発医薬品:ベンザリン・ネルボン)
  • クロナゼパム(先発医薬品:ランドセン・リボトリール)
  • ニメタゼパム(先発医薬品:エリミン)(※2015年販売中止)
  • フルニトラザパム(先発医薬品:サイレース・ロヒプノール)

図2 ニトロベンゾジアゼピン

ニトロベンゾジアゼピン

ベンゾジアゼピン系睡眠剤は通常、睡眠構築においてステージ2を延長させて、深い眠りに関連するステージ3、4は減少することがわかっています2)。

しかし、ニトラゼパムは、ステージ3、4を増加させることが報告されており3)、ベンゾジアゼピン系睡眠剤の中では比較的深い睡眠がとれる可能性が示唆されています。

剤型

先発医薬品のベンザリンは錠剤が2mg錠、5mg錠、10mg錠と細粒1%があります。

先発医薬品のネルボンは錠剤5mg、10mgと細粒1%があります(図3)。

図3 ニトラゼパム(先発医薬品:ベンザリン・ネルボン)の剤型(錠剤)

ニトラゼパム(先発医薬品:ベンザリン・ネルボン)の剤型(錠剤)

効能・効果

効能・効果は以下となっています。

  • 1.不眠症
  • 2.麻酔前投薬
  • 3.異型小発作群
    点頭てんかん,ミオクロヌス発作,失立発作等
    焦点性発作
    焦点性痙攣発作,精神運動発作,自律神経発作等

用法・用量

  • 1. 不眠症に用いる場合、通常、成人では1回5~10mgを就寝前に内服します。なお、年齢、症状により適宜増減します。
  • 2. 麻酔前投薬の場合、通常、成人ではとして1回5~10mgを就寝前又は手術前に内服します。なお、年齢、症状、疾患により適宜増減します。
  • 3. 抗てんかん剤として用いる場合、通常、成人・小児ともに 1日5~15mgを適宜分割し内服します。なお、年齢、症状により適宜増減します。

薬物動態

ニトラゼパム5mgを空腹時に1回内服した際は、血液中の濃度は約1.6時間後に最高濃度に達し、約27時間後に半減します(図4)。

図4 ニトラゼパム5mgを1回内服した際の血中濃度の推移

ニトラゼパム5mgを1回内服した際の血中濃度の推移

食事の影響はありません3)。

ニトラゼパムの肝臓での代謝には、以下の代謝酵素が関与していること報告されています4)、(図5)。

  • アルデヒデオキシダーゼ-1(AOX1)
  • N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)
  • アリールアセトデアチラーゼ(AADAC)
  • CYP3A4

図5 ニトラゼパムの肝臓での代謝

ニトラゼパムの肝臓での代謝

副作用

不眠症治療における副作用再評価結果では、評価対象例3,294例中664件の副作用発現を認め、代表的なものは以下でした。

  • ふらつき感(5.16%)
  • 眠気・残眠感(4.19%)
  • 倦怠感(3.64%)
  • 頭痛・頭重感(1.58%)
  • 口渇(1.06%)

フルニトラザパム(先発医薬品:サイレース・ロヒプノール)との副作用の比較では、特に神経系・全身・精神においてニトラゼパムの方が副作用発現が多いことが報告されています6)、(図6)。

図6 ニトラゼパムとフルニトラザパムの副作用の比較

ニトラゼパムとフルニトラザパムの副作用の比較

催眠作用はフルニトラザパムより弱いものの、ニトラゼパムは、催眠作用に関与するω1受容体だけでなく、筋弛緩に関与するω2受容体にも多く結合するため6)、転倒などのリスクが高くなります。

ニトラゼパムは、高齢者股関節骨折のリスクが高い薬剤であることが報告されています7)。

文献

  • 1) Swinyard EA, Castellion AW. : Anticonvulsant properties of some benzodiazepines. J Pharmacol Exp Ther, 151 : 369-75, 1966.
  • 2) de Mendonça FMR, et al. : Benzodiazepines and Sleep Architecture: A Systematic Review. CNS Neurol Disord Drug Targets. 22 : 172-179, 2023.
  • 3) Jovanovic UJ, Dreyfus JF. : Polygraphical sleep recordings in insomniac patients under zopiclone or nitrazepam. Pharmacology, 2 : 136-45, 1983.
  • 4) Holm V, et al. : Influence of food and of age on nitrazepam kinetics. Drug Nutr Interact, 1 : 307-11, 1982.
  • 5) Konishi K, et al. Identification of enzymes responsible for nitrazepam metabolism and toxicity in human. Biochem Pharmacol, 140 : 150-160, 2017.
  • 6) 長門 祐子, 土橋 洋史. : フルニトラザパムとニトラゼパムの比較検討. 医学と薬学, 62 : 649-652, 2009.
  • 7) Waade RB, et al. : Psychotropics and weak opioid analgesics in plasma samples of older hip fracture patients - detection frequencies and consistency with drug records. Br J Clin Pharmacol, 83 : 1397-1404, 2017.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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