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エチゾラム(デパス)の
作用・特徴・副作用

公開日 2023.4.17

作用・特徴

エチゾラム(デパス)は、穏やかな作用の抗不安薬であるクロチアゼパム(リーゼ)を元に開発された、作用の強い抗不安薬です1)、(図1)。

1984年から発売されています。

図1 クロチアゼパム(リーゼ)とエチゾラム(デパス)の化学構造式

クロチアゼパム(リーゼ)とエチゾラム(デパス)の化学構造式

クロチアゼパム(リーゼ)もエチゾラム(デパス)もチエノジアゼピン環を有するチエノジアゼピン系化合物に属し、厳密にはベンゾジアゼピン環とは構造が異なりますが、作用は一緒なので一般にベンゾジアゼピン系抗不安薬と区別せず扱われます(図2)。

図2 ベンゾジアゼピン環とチエノジアゼピン環の化学構造式

ベンゾジアゼピン環とチエノジアゼピン環の化学構造式

アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)がベンゾジアゼピン環にトリアゾール環を縮合して開発されたように、エチゾラム(デパス)も、チエノジアゼピン環にトリアゾール環を縮合し、トリアゾロチエノジアゼピンに合成されることで作用の強化が図られました(図3)。

図3 トリアゾロチエノジアゼピンの合成

トリアゾロチエノジアゼピンの合成

アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)がトリアゾロベンゾジアゼピンとして抗不安作用が強く、催眠作用を有するのと同じく、トリアゾロチエノジアゼピンに合成されたエチゾラム(デパス)も抗不安作用が強く、催眠作用を有します。

また、強力な筋弛緩作用も有しています。抗けいれん作用は弱く、ジアゼパムの半分ほどの効力と報告されています2)、(図4)。

図4 エチゾラム(デパス)の作用

エチゾラム(デパス)の作用

また、ノルアドレナリンの作用を強め、抗うつ効果を有することが示唆されています3)、4)。

上記のような開発経緯からアルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)とエチゾラム(デパス)も似た化学構造式となっており、作用も比較的近いものとなっています3)、(図5)。

図5 アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)とエチゾラム(デパス)の化学構造式

アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)とエチゾラム(デパス)の化学構造式

剤型

剤型は錠剤が0.25mg錠、0.5mg錠、1.0mg錠と、細粒1%があります(図6)。

図6 エチゾラム(先発医薬品デパス)の剤型(錠剤)

エチゾラム(先発医薬品デパス)の剤型(錠剤)

効能・効果

効能・効果は以下となっています。

  • 神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害
  • うつ病における不安・緊張・睡眠障害
  • 心身症(高血圧症,胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・ 睡眠障害
  • 統合失調症における睡眠障害
  • 下記疾患における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張
    頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛

日本以外に韓国、イタリア、インドで承認されており、承認状況は以下図のようになっています(図7)。

図7 エチゾラム(デパス)の日本・韓国・イタリアでの保険適応

エチゾラム(デパス)の日本・韓国・イタリアでの保険適応

用法・用量

  • 神経症、うつ病の場合は通常、成人では1日3mgを3回に分けて内服します。
  • 心身症、頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛の場合は通常、成人ではエチゾラムとして1日1.5mgを3回に分けて内服します。
  • 睡眠障害に用いる場合は通常、成人では1日1~3mgを就寝前に1回内服します。

いずれの場合も年齢、症状により適宜増減をすることがありますが,高齢者には、エチゾラムとして1日1.5mgまでとなっています。

(添付文書と呼ばれる薬の説明書では上記のように記されていますが、実際には神経症、うつ病にも1日1.5mg から開始することが一般的です。また、不眠症に使用する場合も0.5mgから使用することが一般的です。)

薬物動態

エチゾラムは肝臓で代謝酵素CYP2C9及びCYP3A4により代謝されます。

そのため、CYP3A4の働きを阻害するフルボキサミン(ルボックス・デプロメール)と併用するとエチゾラムの血中濃度が高くなります。

エチゾラムを1回内服した際の血液中の濃度は約3時間で最高濃度に達し、約6時間で半減します(図8)。

図8 エチゾラム(デパス)を1回内服した際の血中濃度の推移

エチゾラム(デパス)を1回内服した際の血中濃度の推移

副作用

承認時までの調査症例1,618例中405例(25.2%)に副作用が認められ、代表的な副作用は以下でした。

  • 眠気(13.3%)
  • ふらつき(8.4%)
  • 倦怠感(3.2%)

エチゾラム(デパス)もアルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)と同様に短時間に強い効果を発揮するベンゾジアゼピン系抗不安薬で依存・耐性が形成されやすくなります。

離脱症候群も生じやすいため、毎日服用していた際は慎重に漸減する必要があります。

アルプラゾラムとの比較

アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)との効果・強さの比較についてですが、不安に対する効果はおおむね同等と報告されています6)、7)、(図9)。

図9 アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)vsエチゾラム(デパス):不安に対する効果

アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)VSエチゾラム(デパス):不安に対する効果

ただし、筋緊張、胃腸症状などの身体的症状を伴う不安にはエチゾラム(デパス)がやや有効との結果があり、身体症状を伴う不安には、エチゾラム(デパス)が勝る可能性が示唆されています7)、(図10)。

図10 アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)vsエチゾラム(デパス):不安の身体的兆候に対する効果

アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)VSエチゾラム(デパス):不安の身体的兆候に対する効果

おひとりで悩んでいませんか?

不安症状がある場合は、我慢せずに心療内科・精神科に受診することをおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

参考

  • 1)Inada T, Inagaki A. : Psychotropic dose equivalence in Japan. Psychiatry Clin Neurosci, 69 : 440-7, 2015.
  • 2)Tsumagari T, et al. : Pharmacological properties of 6-(o-chlorophenyl)-8-ethyl-1-methyl-4H-s-triazolo[3,4-c]thieno[2,3-e] [1,4]diazepine (Y-7131), a new anti-anxiety drug. Arzneimittelforschung, 28 : 1158-64, 1978.
  • 3)Setoguchi M, et al. : Effects of 6-(o-chlorophenyl)-8-ethyl-1-methyl-4H-s-triazolo [3,4-c]thieno[2,3-e][1,4]diazepine (Y-7131) on the metabolism of biogenic amines in brain. Arzneimittelforschung, 28 : 1165-9, 1978.
  • 4)葉田 裕. 他: 各種神経症に対するEtizolam (Y-7131)のDiazepam, Placeboとの多施設二重盲検比較試験. 臨床精神医, 98 : 111-131, 1979.
  • 5)Sanna E, et al. : Molecular and neurochemical evaluation of the effects of etizolam on GABAA receptors under normal and stress conditions. Arzneimittelforschung, 49 : 88-95, 1995.
  • 6)Bertolino A, et al. : Etizolam in the treatment of generalized anxiety disorder: a controlled clinical trial. J Int Med Res, 17 : 455-60, 1989.
  • 7)Pariante F, et al. : Etizolam in the treatment of generalized anxiety disorder associated with depressive symptoms. Curr Med Res Opin, 11 : 543-9, 1989.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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