公開日 2022.2.10
はじめに
メンタルヘルス上の疾患では喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を伴いやすいことが知られています1)、2)。
またアレルギー性疾患の罹患は将来のメンタルヘルス上の疾患発症のリスクでもあります3)、4)、5)、(図1)。
図1
従来は特に統合失調症で多く研究されていましたが、近年はADHDや自閉スペクトラム症での報告も多くされています6)、7)。
アレルギー性鼻炎では夜間の不眠をきたすことがあり、花粉症の時期にはより注意が必要です8)、9)。
統合失調症や双極性障害では症状の悪化に伴い、喘息の管理が難しくなることもあり相互に疾患の管理を行う重要性があります8)。
抗アレルギー薬について
抗アレルギー薬は脳の中に入り作用し、眠気がでてしまいやすい第1世代抗ヒスタミン薬と脳に移行しにくく、眠気の出にくい第2世代抗ヒスタミン薬があります。
脳内への移行から鎮静系と非鎮静系に分ける捉え方がされています(図2)。
図2
第1世代抗ヒスタミン薬にはヒドロキシジン(アタラックスP)、プロメタジン(ヒベルナ、ピレチア)、ジフェンヒドラミン(レスタミン)などがあります。
眠気の副作用があるものの、気持ちを落ち着かせる作用もあり、安静目的で第1世代抗ヒスタミン薬が使用されることもあります。
また、めまいや乗り物酔いにも効果があるため、めまい止めや乗り物酔い止めにも使用されます。
第2世代抗ヒスタミン薬には以下のようなものがあります。
- フェキソフェナジン(アレグラ)
- エピナスチン(アレジオン)
- オロパタジン(アレロック)
- ベポタスチン(タリオン)
- レボセチリジン(ザイザル)
- ビラスチン(ビラノア)
- ルパタジン(ルパフィン)
- デスロラタジン(デザレックス)など
アレグラは眠気が少ない特徴があります。
ザイザルはジルテックの光学異性体で、ジルテックはアタラックスPの代謝産物で“親→子→孫”のように開発された薬で、バランスの良さから多く処方されました。
近年の抗アレルギー薬について
2016年に新たにビラノアとデザレックスが承認され、2017年にルパフィンが承認され、現在3剤の処方が増えています。
ビラノアは以下のような特徴があります。
- ①即効性がある
- ②眠気が少なく、内服後の車の運転が禁止されていない
- ③肝臓への負担が少ない
食後に内服すると血液中の薬の濃度が下がるため、空腹時に内服する必要があり、通常、眠前に1回内服します。
デザレックスはクラリチンの代謝産物から作られた薬です。
クラリチン同様に眠気が少なく、車の運転が可能です。
またクラリチンと同じく1日1回の内服で効果が持続します。
ルパフィンは抗ヒスタミン作用と炎症を抑える作用である抗PAF(血小板活性化因子)作用という作用をもっており、アレルギー性鼻炎の鼻づまりにも効果があります。
ルパフィンを内服すると体内で代謝され、一部がデザレックスになります。
代謝産物のデザレックスも抗アレルギー薬として効果を同時に示すとされています。ビラノア、デザレックス同様1日1回で効果が持続します。
ロイコトリエン受容体拮抗薬について
ロイコトリエン拮抗薬にはモンテルカスト(キプレス、シングレア)、プランルカスと(オノン)があります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬は気管支の炎症を鎮め、気管支喘息に効果を有します。
また、鼻腔内の通気の抵抗を減らす効果があり、アレルギー性鼻炎の鼻閉に効果を有します。
ロイコトリエン受容体拮抗薬は通常安全に使用できますが、メンタルヘルス上の疾患があり、不安やイライラ感が出やすい場合などでは、まれに不安、イライラ感が悪化することが報告されています11)。
その場合は速やかに注意することで改善します。
まとめ
メンタルヘルス上の疾患とアレルギー疾患は併存しやすいため、症状に応じ、非鎮静系の抗アレルギー薬を使用した管理が必要です。
花粉症の時期には日常生活、仕事に影響がでないよう対策をすることが望ましいと言えます。
文献
- 1) Alonso J, et al. Association between mental disorders and subsequent adult onset asthma. J Psychiatr Res, 59 : 179-88, 2014.
- 2) Chu CY, et al. : Patients with chronic urticaria have a higher risk of psychiatric disorders: a population-based study. Br J Dermatol, 182 : 335-341, 2020.
- 3) Wu Q, et al. : Childhood and Parental Asthma, Future Risk of Bipolar Disorder and Schizophrenia Spectrum Disorders: A Population-Based Cohort Study. Schizophr Bull, 45 : 360-368, 2019.
- 4) Khandaker GM, et al. : A population-based study of atopic disorders and inflammatory markers in childhood before psychotic experiences in adolescence. Schizophr Res, 152 : 139-45, 2014.
- 5) Wang WC, et al. : Asthma, corticosteroid use and schizophrenia: A nationwide population-based study in Taiwan. PLoS One, 12 : e0173063, 2017.
- 6) Miyazaki C, et al. : Allergic diseases in children with attention deficit hyperactivity disorder: a systematic review and meta-analysis. BMC Psychiatry, 17 : 120, 2017.
- 7) Billeci L, et al. : Association Between Atopic Dermatitis and Autism Spectrum Disorders: A Systematic Review. Am J Clin Dermatol, 16 : 371-88, 2015.
- 8) Liu J, et al. : The association between allergic rhinitis and sleep: A systematic review and meta-analysis of observational studies. PLoS One, 15 : e0228533, 2020.
- 9) Xi L, et al. : The work behaviors of patients with allergic rhinitis (AR) during the autumn pollen season. Ann Palliat Med, 9 : 2776-2785, 2020.
- 10) Lavoie KL, et l. : Are psychiatric disorders associated with worse asthma control and quality of life in asthma patients? Respir Med, 99 : 1249-57, 2005.
- 11) Dixon EG, et al. : Adverse drug reactions of leukotriene receptor antagonists in children with asthma: a systematic review. BMJ Paediatr Open, 5 : e001206, 2021.
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