ADHDの脳疲労に有効な栄養とは?

2026.06.20

ADHD(注意欠如・多動症)の方の多くは、

  • 集中するとすぐに疲れる
  • 午後になると頭が働かない
  • 頭がぼんやりする(ブレインフォグ)
  • 考えがまとまらない

といった「脳疲労」を経験します1)。

近年では、この脳疲労は単なる気のせいではなく、脳内のアミノ酸代謝の変化が関係している可能性が明らかになってきました。

2026年5月、Yamamotoらは、ADHDモデルラットおよび健常成人を対象に、脳疲労に対するアミノ酸の効果について検討しました2)。

その結果、分岐鎖アミノ酸(BCAA)だけでなく、フェニルアラニンとメチオニンを組み合わせることで、より強い脳疲労の改善効果が期待できることが報告されました。

ADHDではなぜ脳疲労が起こるのでしょうか?

これまでは、「疲労すると脳内のセロトニンが増えること」が脳疲労の原因と考えられてきました。

しかし最近では、それ以上にトリプトファンという必須アミノ酸が重要な役割を果たしていることが分かってきました3)。

疲労すると血液中のトリプトファンが増え、脳内へ多く取り込まれるようになります。

脳内に入ったトリプトファンは、

  • 眠気
  • 無気力
  • 集中力の低下
  • 認知機能の低下

などを引き起こす可能性があります。

また、トリプトファンを投与すると、覚醒に重要な縫線核(ラフェ核)の神経活動が低下することも報告されており、トリプトファン自体が脳の活動を抑える作用を持つ可能性が示されています。

トリプトファンの約95%は「キヌレニン経路」で代謝される

近年では、脳疲労の原因として、セロトニンよりもキヌレニン経路が注目されています。

脳に取り込まれたトリプトファンは、

  • 約5%がセロトニン
  • 約95%がキヌレニン

へ代謝されます。

さらにキヌレニンは、

  • キヌレン酸
  • キノリン酸

へ代謝されます。

これらの代謝産物は、脳の情報伝達に重要な

  • NMDA受容体
  • α7ニコチン性アセチルコリン受容体

を調節し、注意力や学習能力、認知機能に影響を及ぼすことが分かっています。

キヌレン酸は脳疲労を引き起こす可能性がある

動物実験では、睡眠不足による疲労で、

  • 海馬
  • 視床

のキヌレン酸濃度が増加し、

  • 空間記憶の低下
  • 社会性の低下

が認められました。

また、キヌレン酸の前駆体であるキヌレニンを投与すると、

  • 学習能力の低下
  • 行動量の減少
  • 運動疲労の増加

が認められています。

さらに健康な人でも、トリプトファンを摂取するとストループ課題中の前頭葉や頭頂葉の活動が低下することが報告されており、トリプトファンやその代謝産物は注意力や集中力にも影響を及ぼす可能性があります。

BCAAはトリプトファンが脳へ入るのを防ぐ

トリプトファンは、血液脳関門を通過する際に「LAT(L型アミノ酸トランスポーター)」という輸送体を利用します。

しかし、この輸送体はトリプトファンだけでなく、

  • バリン
  • ロイシン
  • イソロイシン(BCAA)
  • メチオニン
  • フェニルアラニン

なども運んでいます。

つまり、これらのアミノ酸は脳へ入る際に互いに競争しています。

BCAAを摂取すると、トリプトファンの脳内への取り込みが抑えられ、結果として脳疲労が軽減される可能性があります。

実際にラットでは、BCAAを投与すると脳内トリプトファンの増加が抑制され、疲労が軽減することが確認されています。

フェニルアラニンとメチオニンを加えるとさらに効果が高まる

2026年の研究では、BCAAだけでなく、

  • フェニルアラニン
  • メチオニン

を組み合わせることで、トリプトファンの脳内への取り込みがさらに強く抑制されました。

これは、これらのアミノ酸もLATを介してトリプトファンと競合するためと考えられています。

その結果、ADHDモデルラットだけでなく健常成人でも、BCAA単独よりも脳疲労の改善効果が高いことが示されました。

食事から摂取できる食品

これらの必須アミノ酸は日常の食品から摂取できます。

BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)

  • 鶏むね肉
  • 牛肉
  • 豚肉
  • 牛乳・ヨーグルト
  • 大豆製品

フェニルアラニン

  • 肉類
  • 魚介類
  • チーズ
  • 大豆製品
  • ナッツ類

メチオニン

  • 鶏肉
  • 牛肉
  • ごま
  • 大豆製品

まとめ

バリン・ロイシン・イソロイシン(BCAA)に加え、フェニルアラニンやメチオニンを十分に含むバランスのよい食事は、ADHDの脳疲労を軽減する一助となる可能性があります。

ただし、現時点でこれらの栄養素がADHDや脳疲労に対する標準治療として確立されているわけではありません。

今回の知見は動物実験や初期のヒト研究に基づくものであり、実際の臨床効果については今後さらなる研究が必要です。

そのため、サプリメントの自己判断による大量摂取ではなく、まずはバランスのよい食事を基本とし、必要に応じて医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。

文献

  • 1)Rogers DC, et al.: Fatigue in an adult attention deficit hyperactivity disorder population: A trans-diagnostic approach. Br J Clin Psychol, 56: 33-52, 2017.
  • 2)Yamamoto T, Koleda-Yamamoto B.: Potential Treatment for ADHD Based on Recovery from Tryptophan-Induced Central Fatigue by Powerful Competitive Inhibition of L-System Amino Acid Transporter. Int J Tryptophan Res, 19:11786469261453179,2026.
  • 3)Yamamoto T.: The relationship between central fatigue and Attention Deficit/Hyperactivity Disorder of the inattentive type. Neurochem Res, 47: 2890-2898, 2022.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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